第38回【マンションの地震保険で知っておきたい「全棟みなし判定」の秘密】

 

「はじめての不動産売買に、明るく朗らかな未来を」 株式会社明朗の千場智樹(せんば ともき)です。

 

2026年7月に発生した熊本地震をはじめ、近年は大きな地震への備えがより一層重要視されています。

特に分譲マンションを購入・所有している方にとって、専有部分と共用部分の保険の考え方は少し複雑です。

お部屋が無被害であっても保険金の支給対象になる「全棟みなし判定」の仕組みについて、ポイントを押さえて解説します。

 

はじめに:無傷のお部屋でも保険金がもらえる?

 

地震という大きな災害に見舞われた際、日頃から備えていた地震保険は大変頼りになる存在です。

しかし、分譲マンションにおける地震保険の支払いルールには、戸建て住宅とは異なる大きな特徴があるのをご存じでしょうか。

 

特に多くの方が驚かれるのが、

「自分の部屋の内部は壁紙ひとつ傷ついておらず、ほぼ無被害だったのに保険金が支払われた」

「管理会社から、共用部分が一部損なら専有部分も一部損になると言われたけれど本当なのか」

という点です。

結論からお伝えすると、このお話は紛れもない事実です。

ご自身のお部屋(専有部分)に目立った被害がなかったとしても、

マンション全体の「共用部分」が「一部損」と判定されれば、ご自身が契約している建物地震保険から5%の保険金が支給されます。

 

今回は、意外と知られていない分譲マンションの地震保険の仕組みについて分かりやすく解説します。

 

マンション特有の二重構造:「専有部分」と「共用部分」

 

分譲マンションの建物は大きくふたつに分かれています。

ひとつは、住居の内部や内装といった個人の所有スペースである「専有部分」

もうひとつは、エントランス、廊下、エレベーター、外壁、建物の構造を支える柱や床といった「共用部分」です。

保険についてもこのふたつは別々です。

専有部分の火災保険・地震保険は各部屋の所有者が個人で契約し、共用部分の保険はマンションの管理組合がまとめて契約するのが一般的です。

 

「個人で入っている保険なのだから、自室の被害だけで決まるのでは?」と考えてしまいますが、マンションはひとつの巨大な構造物を全員で共有しています。

そのため、外壁や基礎などの共用部分にダメージを受けると、個人の室内が無傷であっても建物全体の価値や安全性に影響が及びます。

 

判定の鍵を握る「1棟認定(全棟みなし判定)」

 

そこで採用されているのが、「1棟認定(全棟みなし判定)」という損害認定のルールです。

このルールでは、損害保険協会の調査員などがマンション1棟全体の主要構造部(柱、はり、外壁など)の被害状況を一括で査定します。

そして、建物全体の損害状況に基づいて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」といった区分を判定します。

ここで共用部分が「一部損」と判定された場合、その判定結果がマンション全体の各お部屋(専有部分)にもそのまま適用されます。

そのため、個人の室内の被害が一部損に満たない状態であっても、共用部分の判定に連動して「専有部分も一部損」とみなされる仕組みになっているのです。

 

地震保険における「一部損」の給付額は、契約している建物地震保険金額の5%です。

たとえば専有部分の建物地震保険を1,000万円で設定していた場合、その5%にあたる50万円が手元に支払われます。

 

なぜこのようなルールがあるのか?

 

最大の理由は、大規模災害が起きた際の「迅速な被害補償」です。

何百戸もある大型マンションにおいて、調査員が一戸一戸を訪問して室内を細かく点検していくのには膨大な時間がかかります。

それでは、生活の再建に必要な保険金が被災者のもとに届くまで何ヶ月もかかってしまうかもしれません。

建物全体の骨組み(共用部分)をまとめて一括査定することで、スピード感を持って公平に保険金を届けることができるよう配慮されています。

 

覚えておきたい3つの注意点

 

1.対象は「建物の保険」のみ

このルールで連動するのは「専有部分(建物)」の地震保険です。

家具や家電などの「家財」については連動せず、個別の室内調査で判定されます。

 

2.自室の被害が大きい場合は個別判定が優先

共用部分は「一部損」でも、自室の室内壁が大きく壊れて「半損」に相当するような場合は、個人の被害判定が優先され、より高い損害区分で給付されます。

 

3.建物の地震保険加入が必須

ご自身で専有部分の「建物」に地震保険を付帯していなければ支給されません。

(火災保険のみ、または家財のみの加入は対象外)

おわりに:正しい知識で暮らしの再建を

 

「自分の部屋は綺麗だから関係ない」と思い込まず、マンション管理組合から共用部分の損害認定について案内があった際は、ぜひご自身の保険会社や代理店に相談してみてください。

 

災害はいつ訪れるか分かりませんが、正しい情報と知識を持っておくことで、不安を安心に変えることができます。

どのような状況であっても皆様が「明るく朗らか」な毎日を過ごせるよう、本記事が大切な住まいと暮らしを守るための一助となれば幸いです。

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