不動産コラム第13回【はじめて不動産を売却する際に知っておくべきこと(相続編)】

「はじめての不動産売買に 明るく朗らかな未来を」株式会社明朗の千場智樹です。
前回のコラムでは、「はじめて不動産を売却する際に知っておくべきこと」と題して、住み替え(居住中の戸建住宅やマンションを売却し、別の住まいへ引っ越す)の場合についてお話ししました。
今回は、相続によって取得した戸建住宅を売却する場合について解説します。
相続によって取得した戸建住宅は、住み替えの場合と異なり、すでに空き家の状態であることがほとんどです。
そのため、前回のコラムでご紹介した「空き家にして売却する方法」を常に選択できます。
しかし、今回特に注目していただきたいのは、「相続によって取得した居住用の空き家を譲渡した場合の特別控除の特例」が適用できるかどうかです。
『相続によって取得した居住用の空き家を譲渡した場合の特別控除の特例』とは?
通常、不動産を売却して得られた譲渡益(売却金額 - 取得費 - 諸費用)には税金がかかります。
しかし、この特例を適用すると、譲渡益から最大3,000万円を控除できます。
譲渡益が3,000万円に満たない場合は、その金額が控除の限度となります。
具体的な例を見てみましょう。
相続した戸建を解体し、更地にした土地が2,000万円で売れたとします。
取得費
相続で取得した不動産の場合、不動産売買契約書が残っていないことが多いため、いくらで買ったものであるかわからないことがほとんどです。
その場合には、売却金額の5%が取得費とみなされます。
2,000万円 × 5% = 100万円
諸費用
仲介手数料 72.6万円(2,000万円 × 3% + 6万円 + 税)、解体費用や境界確定費用などで合計250万円かかったとします。
これらの費用を差し引くと、 2,000万円 - 100万円 - 72.6万円 - 250万円 = 1,577.4万円
この場合、譲渡益は1,577.4万円となりますので、通常はこの金額に税率がかけられます。
税率は、売却する不動産の所有年数によって異なります。
所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」となり、税率は20.315%(所得税 15.315% 住民税 5%)となります。
所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」となり、税率は39.63%(所得税 30.63% 住民税 9%)となります。
しかし、3,000万円の特別控除が適用されれば、譲渡益の1,577.4万円が全額控除されるため、支払うべき税金は0円になります。
相続した不動産を売却する方にとって、この3,000万円の特別控除は非常に大きなメリットですが、適用には一定の条件を満たす必要があります。
特例適用のためのある一定の条件とは?
いくつかある条件の中でも、特に知っておくべき2つのポイントをご紹介します。
1.売却時期の制限
この特例は、令和9年12月31日までに、かつ、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡されたものに限定されます。
例えば、相続開始日が令和6年6月24日であれば、令和9年12月31日までに譲渡する必要があります。
たとえ相続開始日が令和7年6月24日であっても、同様に令和9年12月31日までの譲渡に限られます。
期限を過ぎてしまうと、せっかく受けられるはずの3,000万円の特別控除が受けられなくなってしまいます。
売却を急がないと考えていると、思わぬ損をしてしまう可能性があるので注意が必要です。
2.売却時までの使用状況
譲渡時まで、事業用に使用したり、他者に貸したりしていないことが条件です。
売却を急がない場合、その間の有効活用を考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、売却までの間に誰かに貸してしまうと、この特例の条件を満たせなくなってしまいます。
不動産を相続しても、「不動産会社に相談するのは数年先で良い」と考えていると、上記の2つの条件を満たせなくなるケースが多々ありますので、十分な注意が必要です。
事前の情報収集が重要です
なお、上記以外にも、対象となる家屋が旧耐震住宅(昭和56年5月31日以前に建築された家屋)であることや、譲渡の前後で建物の解体または耐震リフォームを行う必要があることなど、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。
これらの内容はインターネットでも調べられますが、不動産を相続した際には、たとえ売却時期が先であっても、事前の情報収集が非常に大切です。
「知らないことで損をする前に」、まずは不動産会社に相談してみてはいかがでしょうか。
このコラムが、皆様の後悔のない売却を実現するための一助となれば幸いです。